富良野市の職員として働く5人のSTORY

まちを支えるという
ジョブスタイル

市民が安心して快適に暮らせるよう環境を整え、サービスを提供するのが市役所職員の役割。とはいえ、多くの人は例えば市役所の窓口で関わるような、ごく一部の仕事しか思いつかないかもしれません。現在、富良野市には、さまざまな部門で約270人(※)の職員が働いています。実際にどんな仕事があり、どんな思いや苦労、やりがいがあるのか。5人の新人職員に話を聞きました。

※H28年10月1日現在

ワイン醸造所の一員としてぶどうの品質に目を配る

富良野市ぶどう果樹研究所
業務製造課 業務係
池原作務さん

沖縄県出身。大学院までの6年間を網走で過ごし、就職で富良野へ。ワイン工場の売店や市内外のイベントや物産展で販売を担当することもあり、お客さんの反応がダイレクトに聞けるのが励み、という。

「ワインは農作物」だといわれる。
原料用ぶどうの出来が、ワインの品質を左右するからだ。

「ぶどうの出来が良くないと、どの酵母を使うかなど醸造工程でいくら工夫しても、根本的な味の修正はできません。だからこそ“良いぶどうを作る”というやりがいは大きい。栽培だけでなく、ここは醸造、販売まで、すべての工程に関われるのも魅力です」

こう話すのは、2016年春から富良野市ぶどう果樹研究所で働く池原さん。技術者として、原料用ぶどうの品質管理や契約農家の技術指導を担当している。

同研究所は、1972年に自治体がワインを製造・販売する道内2番目のワイナリーとして誕生した。昼夜の寒暖差を利用した高品質のぶどうで作られる「ふらのワイン」は、国内外で高く評価され、市を代表する特産品として知られている。

池原さんがワインの魅力に出会ったのは大学時代。食品関連の仕事に興味を持ち、出身地の沖縄から、網走にキャンパスを置く大学の食品香粧学科へ進学した。研究室でワインの香りと酵母の遺伝子の関連を学ぶうち、その面白さに惹かれていったという。

春から秋にかけては、市直営農場や契約農家の畑を見て回る。「ぶどうの生育状況を確認するため、週に何度も畑の巡回に出ます。虫や病気が出ていた場合は対策をお願いしたり、ほかの農家さんにも事例と対策を伝えたりして、良いぶどうを育てるための情報共有もしています」

いくつもの広大な畑を管理するのはとても大変そうだけれど、実際どうなんだろう。
「経験豊富な農家さんが相手なので勉強は欠かせないし、接し方にも気を遣います。でも、畑に出ている時が一番楽しい」と池原さん。

「ぶどうは房に光を当てた方が糖度が高くなるんですが、ただ葉を取ればいいというものでもなくて。葉の取り方や枝の切り方など、工夫次第で出来が変わるのが面白いんです。もちろん、収穫も醸造も年に1回しか出来ませんから、責任重大です」

ほぼ自然のままの状態で通年16℃に保たれている熟成室。色や香り、味を定期的に確認して状態を確かめる

夏は種苗センターと畑を行き来し、冬はワイン工場で事務作業が多い。「冬も暇になることはありません」と池原さん

収穫後も、翌年のための剪定作業や苗の準備、農家のための市や国の補助金申請など、事務作業を中心にさまざまな業務が続く。

「富良野を代表する商品に関われるのは、自分の誇り」と、家族や親戚に果汁やワインを送った。「おいしいと好評でした」とうれしそうに話す。
昨年初めて関わった新酒は、ぶどうの収穫量の減少で製造本数が少なく、残念ながら市内中探し回っても1本も買えなかった。
「飲んだのは、職員全員でテイスティングした時の一口だけ。残念だったけど、今年はそうならないようにもっとぶどうを作ろう!ってやる気も出ました」

ワインを飲むのも好きで、家に30本ほど入る大きなワインセラーを買ったそう。
少しずつ買い足しているが、「まだ家で一緒にワインを開ける相手はいません。でも、もしいたら何本でも開けちゃいそう」と、人懐っこく笑った。

目標は「自分で新しい商品を作ること」。
いつかその日が来るように、一歩を踏み出したばかりだ。

議員活動を支え市政を学ぶ貴重な毎日

富良野市議会事務局 書記
倉本隆司さん

札幌生まれ。滝川高校、琉球大学を経て現職。富良野に来てからは、休日にお弁当のおかず作りもするという料理男子。中国語の習得を目標に、最近本を購入したばかり。

「今日はよろしくお願いします。まずは議場へご案内しますね」
カチッとしたスーツ姿で現れたのは、富良野市議会事務局で書記を務める倉本さん。カジュアルな服装や作業服姿の職員が多い市役所の中では、ちょっと毛色の違う雰囲気だ。

「議場には正装で入るのが決まりですし、事務局内も議員さんも目上の方ばかりなので。スーツを脱ぐタイミングが分からなくて今に至っています」と笑う。
仕事柄か新人らしからぬ落ち着いた佇まいだけれど、話しをすると面白さがじわじわと伝わってくる人。

市議会は、市民生活に関わるさまざまな問題をどう解決していくか意思決定する機関。事務局は、その運営に必要な事務処理など、議会をサポートする役割を担っている。

議場は庁舎の2階。18人が座る議員席に最も近い演壇前が、倉本さんが座る書記席だ。
「会期中は、ここで議席マイクのオンオフや録音の操作をしています」

年4回の市議会本会議のほか、上富良野町・中富良野町・富良野市・南富良野町・占冠村の5市町村でつくる富良野広域連合の議会もここで行われる。議場に入るのは限られた期間なので、普段はデスクワークが中心だそう。具体的な業務は?

「自分も初めて配属先を聞いた時、何をするのか全く想像つきませんでした。議会に関することでいえば、本会議前には議事運営の台本となる次第書の作成や、市長のスケジュールと擦り合わせての日程調整、終了後も会議録の作成などがあります」

視察に関わる業務もあり、議員の飛行機や宿の手配から、視察先へのアポ入れ、随行、報告書の取りまとめまで行う。
他の自治体から視察の申し込みがあれば、日程や人数的に受け入れできるかどうか内容に応じて担当部局と調整し、当日のアテンドにも出る。
「今年の受け入れ数は少し落ち着きましたが、それでも25件くらいあったかと」

発言する議員のマイクをオンにしたり音量調整も。「タイミングを外さないよう気が抜けません」と倉本さん

議会事務局は現在4人。「年上の方ばかりなので勉強になります。居心地がいいのは局長が気を遣ってくれているからかも…」

倉本さんは入庁直後の歓迎会の席で、『ここは新人が来る所じゃない』と思われているという声を聞き、「自分は大変な所に来てしまったのか…」と不安になったそう。
「確かに、議会事務局は幅広い部局とのやり取りがありますし、市の仕事全体を把握できていない新人には難しい仕事だと思います。でも逆に市政全体が俯瞰できるなんて、入って間もない職員にはなかなかない機会。貴重な経験をさせてもらっています」と、自分の見聞を広げ、成長できるチャンスと捉えている。

1年目は事務局の人数が減ったタイミングだったため、上司のフォローもいただき、業務をやりながら覚えて怒濤のように過ぎていった。多少落ち着いた2年目の今は、自分の課題も見えてきた。
「例えば議員さんから補正予算の使い道について聞かれても、今は上司や該当部局に聞かないと答えられなくて。背景や目的なども含めて即答できるようになりたい」

「議会が何をやっているのか、一度傍聴に来てくれるだけでも伝わると思います。選挙で選ばれた市民の代表である議員の方々が、どんな風に仕事しているか関心を持ってもらえたら」
その時は、議会を影で支えている事務局の存在にも目を向けてみてほしい。

日々の学びを大切に、大好きな地元で保育に奮闘

虹いろ保育所勤務 保育士
小川彩夏さん

名寄で生まれ、小学校から高校まで富良野で過ごす。名寄への短大進学を経て、本人曰く「市職員採用というビッグチャンス」をつかんで帰郷。“へそのまち”富良野は、他都市への交通の利便性、美しい自然とおいしい飲食店の多さが自慢とか。

小さい頃からずっと憧れていた保育の仕事。長年の夢が地元で叶い、市の職員として保育士の道を歩き始めた小川さんを、虹いろ保育所に訪ねた。

ここは、4カ所ある富良野市立保育所の一つ。市内中心部の複合商業施設「フラノマルシェ」に隣接し、140人以上の乳児・幼児を預かる。
2つの保育所を統合して2015年に誕生したばかりとあって、施設内にはまだ新しい木の香りが漂い、明るく開放的な空間だ。

小川さんは担任として、4歳児クラス「めろん組」を受け持つ。
「たまたま私が短大の実習で来た保育所に配属されて、しかも同じクラスの子供たちだったのでびっくり! そのせいか、1週間も経たずにみんな慣れてくれました」
ふざけ合ったり、先生にちょっかいを出したり。
元気いっぱい動き回る子供たちを、1対1の支援につく2人の保育士と一緒に見守っている。

子供たちの成長は早い。
大勢の前に立つことも出来なかった子が発表会でナレーターとして立派にやり遂げたり、普段の保育の中でも昨日出来なかったことが今日は出来るようになったり。
「障がいも含めて一人ひとり個性があります。ペースはそれぞれですが、目の前で成長する姿を見られるのは本当にうれしいし、一番のやりがいです」

正直なところ、学生のころは保育士の役割をさほど深く考えていなかったというが、勤め始めてたくさんの大切なこと、難しさに気付いたという。

一つは、子供の持つ力を伸ばし成長を支える、という役割。
その一例としてこんな話をしてくれた。
担任は、クラスでどんな遊びや製作をするか考えるのも仕事。
「指先の力が弱かったり少し不器用な子もうまくハサミが使えるようになるには、どんな遊びを取り入れたらいいか?というように、ただ楽しいだけじゃなく、成長の後押しになることも併せて考えないといけません」と小川さん。
合同保育の時間には、他の先生方の様子を見て子供との接し方や対応の仕方を学び、いいと思ったことはすぐに実践している。

お子さんの情報を共有するために、保護者とのコミュニケーションも欠かせない。
「『子供のことだけ分かればいい』ではダメなんだって、最近やっと分かってきました。お迎えの時には、できる限りその日の様子などを伝えるようにして、少しずつでも信頼していただけるよう努力しています」
頼りにされ、期待される保育士になりたいと、勉強の毎日だ。

保育のプロとしてのキャリアは始まったばかり。子供たちの成長を支えながら、小川さん自身も日々学び成長を続ける

「いただきま~す」。20人の子供たちの元気な声が響く給食タイム。手作りのおいしい給食はみんな大好き

ここで働いて良かったことを訊ねると、「人間関係の悩みがないこと」と返ってきた。
「ベテランの先生方からいろいろなアドバイスをいただけますし、ちょっとした悩みでもすぐに相談にのってくれます。あっ、あとは毎日手作りのおいしい給食が食べられるのもポイントですね」と笑う。

恵まれた職場で仕事に励み、休日には好きなアーティストのライブに行ったり、バスケの社会人チームで汗を流す。
子供、保護者、保育士同士。人との関わり方が大切な仕事だからこそ、「オン・オフともに充実している今の環境にはとても感謝しています」と小川さん。
子供たちの笑顔があふれる保育所は、保育士さんたちの笑顔もあふれる場所だった。

市民と自然の共生に取り組む森林の専門職

富良野市経済部農林課
農林課 耕地林務係
田村 一輝さん

岩見沢農業高校の森林科学科を卒業し、富良野市で24年ぶりとなる森林の専門職として2015年に入庁。両親がドラマ「北の国から」の大ファンで、富良野は子供のころからよく遊びに来ていた馴染みの土地だそう。

富良野市は、市中心部から車で10分も走れば山に着くほど、市街地と自然が近い。
農業や観光業といった富良野を支える産業も、この環境あってこそ。

市民と自然が、いかにうまく共生していくか。そのバランスを保つ役割を担う部署で働くのが田村さん。岩見沢農業高校の森林科学科を卒業し、入庁して2年になる。
業務内容を伺うと、「森林と野生鳥獣関係の仕事が中心です」と返ってきた。
一体どんな仕事なのだろう。

「森林では、森の健康を保つための調査を行っています。市有林の木を将来的に加工に適した良い木材に育てることを目的に、樹木の育ち具合などを調べるんです。茂り過ぎて日当りが悪くなっている木や、曲がった木の間伐にどれくらい費用がかかるかも算出します」

調査には、夏場を中心に年に何度も出る。
「山に入る時は、真夏でも長袖長ズボン。かなり暑いですが、怪我防止や、マダニにかまれると命に関わることもあるので」
一見ふわっとした雰囲気だが、仕事の話を始めると職人のような凛々しい顔になった。

野生鳥獣に関わる業務は、ヒグマやエゾシカ、タヌキ、キツネなどの個体数・被害調査や、害獣の駆除。
「市民から出没や被害の通報が入れば、現場確認をしたり、猟友会員の皆さんへ駆除の依頼をしたりしています。夏に外に出る仕事は、7~8割がこの鳥獣対応ですね」

野生鳥獣は人に危害が及ぶ危険性や農作物への被害もある。
「ヒグマの出没情報や農作物の被害情報に基づき、現場確認を行ないます。その現場にヒグマがいるかもしれないという怖さがありましたが、これも農家さんの大切な財産を守るためです。在来種であるキツネやタヌキは戻ってこないように、遠い山に放します。」

ヒグマやシカが出た場合は、猟友会のハンターと一緒に現場に向かい、日中は職員だけで毎日何度も巡回する時もあるという。

高校では、林業を専門的に学んだ田村さん。
「野生鳥獣に関しては学校で学ぶ機会はまったくなくて、キツネを間近に見たのも仕事で初めてでした」と笑う。
もっと専門知識を深めていきたいと、日々勉強を続けている。

「高校の勉強も今に生きていますが、仕事しながら覚えたことも多いです」と田村さん。安全に留意しながら山に入る

民有林育成推進事業という造林事業も担当。「法律の難しさに悪戦苦闘してます」と苦笑い

目標にしているのは、キャリア24年の上司。法律に関わる難しいことも何でも把握し、対応策を決めるのも早く、常に市民のことを考えて働く姿勢を尊敬している。
「知識も経験も簡単に追いつけませんが、頼ってばかりでは覚えられません。基本的には自分で調べて考え抜いて、それでも分からなかったら聞く。上司からもそう指導を受けています」

実は同じ公務員でも、最初は別の職種を視野に入れていたそう。
「でも仕事を始めて気付いたんです。僕は動物も、人と関わる事も、外に出ていくのも好き。この仕事は市民の皆さんと関わる場面も多いし、自分にぴったりだったんじゃないかって。高校の担任の先生が勧めてくれなかったら、今僕はここにいないと思う。すごく感謝しています」

家族仲が良く、休日は頻繁に帰省する。
「父も地元で18歳から公務員の職に就いたので、一緒に釣りをしながら人生の先輩としてアドバイスをもらったりしています」。

上司と父。
大きな存在に見守られながら、一人前の職員を目指して頑張っている。

地域住民の健康を支える、まちの保健師さん

富良野市総合保健センター 保健師
名取摩耶さん

群馬県前橋市生まれ、北海道育ち。小学3年から高校卒業まで富良野で過ごす。オフの日は一人でも思い立ったらふらりと出かける行動派で、ギターや読書、美術館巡りにドライブと、趣味は多彩。

行政保健師の役割は、住民の健康の維持・増進をサポートすること。
「専門知識を持っているのは当たり前ですが、それだけでは務まらないのがこの仕事。食生活や生活習慣の改善など、人それぞれの“暮らし”にも踏み込んだ話をするので、地域のみなさんと信頼関係を作ることがとても大切なんです」

2016年春から行政保健師として保健センターに勤務している名取さん。医療系の仕事に就きたいと大学で看護学を専攻し、子供時代を過ごした富良野に戻ってきた。

保健センターには名取さんと同期を含め、9人の保健師が在籍している。
「新人なので、まずは顔を覚えてもらい、私もみなさんの顔を覚えていくことを意識して仕事しています」
健診では事務的な問診にならないよう質問の仕方を工夫したり、保健指導が必要な人に積極的に声をかけるなど、関係づくりに心を配る。
最近は、少しずつではあるけれど声をかけてくれる人も増えてきた。
「大都市だとなかなかこうはいきませんが、富良野は住民との距離が近い。“まちの保健師さん”として地域に受入れてもらえていると感じます」と笑顔を見せる。

目標は、周りの先輩たちのように「この人に話したい、相談したい」と言われる保健師になること。

業務は母子保健が中心。担当地区で赤ちゃんが生まれれば家庭を訪問し、お母さんへの保健指導や乳幼児健診も行う。一方で成人保健にも関わっており、守備範囲は広い。

仕事で大変だと感じることは何だろう?
「担当業務で特に難しいのは、子育てが初めてのお母さんを集めて開く、“新米ママの交流会”の運営でしょうか」。講話や母親たちの座談会の司会進行を、名取さんが担当しているそう。

「何人もの人を前に話をするだけでも緊張します。お母さんたちの不安や悩みを聞きながら話をまとめてアドバイスする立場なのに、今は聞いているだけで精一杯。まだまだ先輩に頼ってて…」と苦笑い。

昔から小さい子供や赤ちゃんが大好きだったので、「仕事で関わることができてとても楽しい」という名取さん

成人の健診は、地域の方々と触れ合い、直接いろいろな話が聞ける貴重な場。自分の価値観を広げられる機会でもある

成人保健業務にも、また違った難しさがある。
病気予防のため、健診結果によって生活習慣の改善を指導するが、伝え方次第ではアドバイスを聞いてさえくれないこともあるそう。
「一方的に『あれはダメ。こうして』では拒絶されます。相手の話にしっかり耳を傾けながら、少しずつ改善方法を伝えていきますが、そのさじ加減が難しいです」

とはいえ、担当地区の住民とどう関わっていくのか、自分で考え行動できることは、責任と同時にやりがいも大きい。「保健師の仕事ってこんなに楽しいんだ」と実感する日々だそう。

「食事制限したり毎日運動するのは、保健師の私だって難しいです。元気なうちに、『無理のない範囲で健康のために出来ることが増えればいいですね』と伝えるようにしています」
健康だからと油断せず、年に一度は健診を受けてほしい―。
経験は浅くても、住民の方々の健康を願う気持ちはベテランの先輩たちと同じ。“まちの保健師さん”は体と生活を見直すきっかけをくれるはずだ。