ふらの農業のために、できること
生産者、消費者の生の声から、必要なコト・モノを創造

農業という産業と農家の暮らしを、あらゆる面からバックアップする JAふらの
夏暑く冬寒いという気候だからこそ、生育時期に昼夜の寒暖の差が生まれ、糖度が上がり、おいしく育つ野菜や米、麦。
“JAふらの”の名で親しまれる、ふらの農業協同組合は、畜産を含めて幅広く北海道の食料基地として発展する富良野を縁の下で支えてきた。
JAふらのがカバーするのは、上富良野町、中富良野町、富良野市、南富良野町、占冠村の1市3町1村。
計22,100ヘクタールに及ぶ農用地で一生懸命に汗を流し、おいしい食材を提供しようと頑張っている生産者たちを、
金融から営農指導、販売、加工、生産、資材や農業機械、さらに旅行と、あらゆる面からバックアップしている。

ふらの産玉ねぎの主力は、硫化アリルという天然成分を多く含む、日持ちの良い品種。ふらの玉ねぎの深い味わいを、ソース、ドレッシング、カレーなどの加工食品で手軽に入手できる
富良野の人気スポット「フラノマルシェ」で、農産物や加工品を販売するJAふらの直営ショップ「オガール」。
2016年から店長を務める西村幸徳さんは、出身地の函館から大学生活を過ごした札幌を経て、
2005年に職員になった。

質問のひとつひとつに、丁寧に答える姿勢は、農産物への向き合い方と通じる
「北海道内で仕事に携わるなら農産物など食品関係がいいと思って、大学卒業後にJAカレッジで1年学ぶことにしたんです」と西村さん。
富良野を選んだのは、JAカレッジの先生たちから「北海道で一、二を争う母体のしっかりした農協で働いてみてはどうか」と勧められたからだ。

JA直売店「オガール」には、道内・道外・外国からもたくさんの観光客が訪れる
その言葉に従って住むことになった富良野。
1年目は30℃を超す夏の暑さと、マイナス20℃にもなる冬の寒さで「泣きそうになった」と笑う。
生産者や消費者と直接ふれあい、両者をつなぐ販売系の仕事がしたいと思っていたが、最初に配属されたのは総務課だった。
ここで、JAふらのという組織のことをみっちり学んだ。

寒暖の差が激しい気候だからこそ、農作物がおいしく育つ富良野。農家の努力で新品種や、より美味な野菜も登場
「大学では産業情報の処理などを専攻していたので、データの収集や資料作りはできると思っていたんですが、
情報の集め方にしても、資料の構成や見せ方にしても、自分がイメージしていたものとは大きなギャップがあった。
答えは一つじゃないということを、改めて思い知りました」
次に異動した青果部は、入荷した農産物を流通させるため市場とやりとりをする立場。
生産者と話す機会も増えたという。

「組合員の方からの厳しい言葉も期待の現れ、と思っています」と、とてもポジティブな西村さん
「そのなかで、生産者と消費者それぞれの思いや、野菜の値段についての認識の違いなども見えてきて。
JAの職員として、両者の橋渡し的な役割をしなければという気持ちが芽生えました」

「ふらのらしさ」が詰まった加工品が、一年を通して並ぶ
一番長く7年在籍した営農部営農課では、国の補助事業の書類作成などを行うほか、青年部や女性部の事務局を担当。
富良野の農業の現状や未来について熱く語り合う生の声に触れた。
「苦労ばかりという農業に対する若い人のイメージを払拭したい、
危機感をもって変わらないといけないという思いを、みなさんから強く感じました。
いま、オガールの店長として情報発信などいろいろやってみたいと考えていることの基盤は、
この時に築けたといっていいかもしれません」

店長になって1年ほどだが、パートのみなさんともコミュニケーション
「乗り越えなきゃいけない壁があったからこそ、成長できた」
インタビュー中、何度かこの言葉を口にした西村さんは、
店舗も加工もまったく経験がないところから直売店の店長としてアイデアを絞り、
「オガールをJAふらのの情報発信基地にしたい」と考え、行動している。

さまざまな加工品開発も。付加価値がつくことで、「ふらの」の食料基地としての価値も上がる
目下の取り組みは、農家が作物を育てる上で何にどう苦労しているかを、具体的に分かりやすく伝える動画制作。
苦労の中身を買い物客に知ってもらえれば、なぜこの値段なのかということが理解されると考えている。

口調は静かだけれど、行動はアグレッシブ
職員になって7年目を迎えた鎌田良子さんは農家に生まれ、両親の苦労を間近に見てきたことから
「農家を支えたい」
と、JAふらのに入った。
配属されたのは、車検や修理など農家で使う自動車に関連した部署。
高校時代はバスケット部のキャプテンを務め、今も社会人チームでプレーしている。

今では笑顔でお客さんに応対。テクニカルな用語もパーフェクトにこなす鎌田さん
「免許は持っていたけれど、車のことは全然分からなくて。
書類を見ても?マークが飛ぶばかり。
先輩たちからは『ミスをするのは当たり前』と温かい言葉をかけられましたが、
ミスが続くとやっぱり悔しかったですね」

年1回、平日5日間の休みを取る制度「L休」を利用し、道外への旅行も楽しんでいる
最初のうちは「先輩に聞いてばかりで、自分で解決しようとしていなかった」と振り返る鎌田さん。
自分で考えて調べたり行動するようになってから、やりがいを感じてきたという。

新車・中古車探しから車検、修理まで、車のことなら何でもおまかせの JAの自動車関連事業「アロック」
「2〜3年はメモを取りまくってました。
今は、お客さんに聞かれたことにもきちんと答えられるし、
工場から回ってきた記録簿に抜けがあると指摘できるようになったので、
成長したかなと思います」

大きな組織を支える一人ひとりが、お互いを尊重し、それぞれの役割を果たす
JAふらのの 植﨑博行組合長は「JA職員の第一歩は、農業の現場を自分の目で見て、聞いて、知ること」と話す。
特に新卒で入った職員には、農協がどういう組織なのかを肌で感じるためにも、1〜2年は組合員である農家と現場で直に接してほしいという。
「組合員が求めているものは何か。
できる・できないを考える前に、まずそこをしっかり掴まなければJA職員の仕事は始まりません。
組合員が一生懸命に汗を流している姿を見たら、自分も汗を流して組合員の要望を肌で感じないと。
机に向かって座ってるだけじゃダメなんです」

「いろいろな能力を生かして、組織の活性化につなげたいですね」と 植﨑組合長
自らも東京の大学を卒業後、実家に戻って23歳で就農。8年前に息子に代を譲るまで農業に従事していた。
だから思う。
「農業は、汗して努力しないと成功しない産業だ」と。
そして
「熱心な農家は必ず成功する。
JA職員も同じで、努力して頑張っていることは周りにも伝わるから、まずは一生懸命にやりなさい」
そう職員に伝えている。

「家庭は大事。今までに何組かのご縁を結んでますよ」。時にはキューピッド役もこなす気さくな組合長
もう一つ、職員によく言うのは「家庭を大事にしなさい」ということだ。
家庭の安定は、仕事の安定。
植﨑組合長自身は、母、妻、息子夫婦と孫2人の4世代7人家族。
お孫さんの話になると「かわいいねぇ」と目尻が下がる。

信頼する部下へのまなざし、そして言葉のひとつひとつに、愛情と期待が込められている
金融から販売、自動車、旅行まで、守備範囲は広いがJAふらのが向かう道は一つ。
農家の気持ちに応え、ふらの農業の発展に力を尽くすこと。
全道No.1の生産地を目指して、それぞれの部署で「自分ができること」を探し、一生懸命に取り組んでいる。