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元気ハツラツ アクティブシニア

シニア世代の
ジョブスタイル

人生の先輩「シニア」の働き方は多様です。
趣味を楽しむ一方で、これまでの経験を活かして社会に貢献する。
定年退職してからまったく違う職種にチャレンジする方、60歳を過ぎて働きだした方。
年を重ねてこその自分らしい働き方は、シニアの特権です。
そんな生き生きとした毎日を送るシニアのライフスタイルを紹介します。

仕事も趣味もなんでもチャレンジ

ダブルワークを楽しむ70代

国内外の観光客が集まる北の峰エリア。長期滞在者向け宿泊施設・フレッシュパウダーで働く藤田シゲ子さんは、月に10日ほど客室の清掃を担当しています。客室はすべてキッチン付きのアパートタイプで、家具は欧米仕様。高さのあるテーブルやシンクを磨き、キングサイズのベッドメイクをこなす小柄な藤田さんは、「家具はちょっと大きいけれど、客室清掃は家事の延長みたいなもの。全然平気よ」と優しい笑みで答えてくれました。作業は一人一部屋が基本。マイルールの掃除方法がある主婦にとって、人に気を遣うことなく、自分のペースで作業できることも、働きやすさのポイントだそう。仕事の後にはスタッフが集まり、打ち合わせがてらお茶を飲み、談笑するのも楽しい時間です。

しかし、藤田さんの仕事はこれで終わりではありません。市内リゾートホテルの温泉清掃業務を夜間に行うこともしばしば。藤田さんがパワフルに働くきっかけは何だったのでしょうか。

株式会社ジャパンフレッシュパウダー
藤田シゲ子さん(72歳)

6人兄弟の末娘として生まれ、高校生まで富良野で過ごす。東京の大学を卒業し、都内企業に就職の後、富良野へ戻り結婚、専業主婦に。60代で再び働き始め、現在は市内2ヶ所で清掃業務を兼務しています。

専業主婦として、長い間、家族を支えてきた藤田さん。欧米仕様のゲストルームを隅々まで清掃し、ベッドメーキングもテキパキとこなします。

いくつになっても挑戦!

専業主婦として歯科医の夫を支え、4人の子どもを育ててきた藤田さんが仕事を始めたのは、60歳を過ぎてから。きっかけはスタッフを探していた知人からの勧誘でした。「頼まれると断れない性格なのもありますが、体を動かすのが好きだったので引き受けました。『元気なら動こう!やってみよう!』と思っているんです」と、いくつになってもアクティブに、落ち込むことがあってもくよくよせずに気持ちを切り替えるように努めているそうです。

前向きな藤田さんが挑戦してきたことは数知れず。日本舞踊や茶道、テニス、ゴルフなど数々の習い事を経験し、ときには息子と一緒に剣道を、娘がピアノを始めればチェロに励んで親子でセッションを楽しみました。市民劇団「へそ家族」結成当初のメンバーで、現在も年数回の舞台公演に参加しています。「劇団に誘われてから20年近くなります。メンバー全員で作品を作り上げるのが楽しくて辞められません」。仕事や趣味を楽しそうに取り組む藤田さんの姿を通して、ほんの少しの勇気と好奇心が、いくつになっても生き生きと輝く秘訣だと教わりました。

勤務先の「フラノ・フレッシュ・パウダー・アコモデーション」はコンドミニアムと呼ばれるキッチン付きの宿泊施設。利用者は長期滞在の外国人旅行客が中心で外観もインテリアもオシャレな雰囲気。

長女が自宅近くに住んでいるので、4歳になる孫の正臣くんの成長を身近で見守ることができる幸せな毎日です。仕事の合間に幼稚園のお迎えにいくこともあります。

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旅行客との触れ合いにやりがいを感じて

鉄道マンから観光協会へ

日本中に富良野の魅力を広めたテレビドラマ「北の国から」。放送を終えて17年経った今も、市内のロケ地には多くのファンが訪れています。麓郷地区の「五郎の石の家」で観光客への対応や、撮影に使用された建物の修繕を担当する上井俊尋さんは74歳。ふらの観光協会で働き始めて14年になります。

上井さんは富良野高校を卒業後、当時の国鉄に就職。富良野駅で貨物の現場や、きっぷの販売窓口などの業務を経験。さらに、国鉄民営化を前に旅行業の資格を取得し、旅行部門の営業職として富良野で働き続け、団体旅行を中心に企画から添乗まで一人でこなしてきました。

富良野観光をアピールするため、九州や沖縄まで全国を飛び回っていた上井さん。定年まで働いたら、後はのんびり暮らすつもりでした。しかし、ふらの観光協会から「修学旅行の誘致を手伝ってほしい」と声を掛けられ、前職の経験が役に立てばと考えが変わりました。

道外各地へPRに出向いたり、地元で修学旅行生の農業体験に協力してくれる農家さんを探したり。中高生に楽しい思い出を作ってもらうために奔走しました。

「都会の子どもたちが、農家のおじいちゃんおばあちゃんとすっかり仲良くなって、泣きながら手を振って帰っていくんですよ。農家さんも交流を楽しんでくれてね」と当時を振り返ります。

 

一般社団法人 ふらの観光協会
上井 俊尋さん(74歳)

富良野の米農家に生まれ、父の勧めで国鉄に就職。旅行業務を担当し、民営化後も富良野駅で働き続けました。定年退職後、ふらの観光協会へ。子どもたちは独立して北海道を離れ、現在は奥さんと二人暮らし。

 

ドラマ「北の国から」のロケ地「五郎の石の家」の窓口では、入場券やグッズの販売、観光案内などを行います。

富良野が好き、人が好き

5年前に麓郷の管理事務所へ異動してからは、観光客のおもてなしが上井さんの仕事です。

「麓郷の現場に移って大正解。毎日たくさんのお客さんと出会えて、いろいろな仕事ができて最高です」。

遠くから訪れた「北の国から」ファンと人生について語り合う日もあれば、顔なじみのリピーターからお土産をもらう日もあります。ロケセットが傷んできたときは、ドラマの世界観を壊さないよう、電動工具や新品のネジを使わずに補修するのもお手のもの。展示施設の冬季休館中は「ふらのスキーまつり」の準備や、ホテルの宿泊客を飲食店街へ運ぶシャトルバスの乗務員を務めるなど、富良野の観光をサポートする毎日です。間もなく75歳を迎える今も、人の輪の中で働く楽しさを満喫しています。

 

ロケ地巡りを楽しむ旅行客のために、展示を解説する上井さん。家屋や道具などロケセットの修理を行い、ドラマの世界観を守るのも上井さんの仕事。

 

趣味はオートバイ。留萌や羽幌の海岸までツーリングに出かけることも。お子さんたちは独立し、奥様と2人、仕事もプライベートも充実した日々を送っています。

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印刷の現場に26年丁寧な仕事で製本のプロに

機械化進んでも現場で活躍

印刷工場で製本を26年担当している坂田さん。断裁機でカットして指定サイズに仕上げたり、冊子や伝票などを正確に綴じたりと、さまざまな工程で印刷物を美しく整えるのが仕事です。熟練が必要な100%手仕事の作業から、デジタル化した機械の操作までこなします。

リゾートホテルでアルバイトをしていたころ、近所に住んでいた㈱コダマの工場長に声を掛けられ今の職場へ。未経験の世界でしたが、当時の先輩たちから技術とプロ意識を学びながら、手先の器用さを生かして腕を磨いてきました。

向上心を持ち自主練習も

「私の仕事は流れ作業の一部ではなく、いろいろな制作物を納品まで担当できるし、どうすればもっと早くきれいに仕上げられるか、自分で工夫できるのも楽しいですね」。坂田さんは〝紙の仕事〞の面白さをそう語ります。教わったことができるようになるだけでは力不足だからと、入社当時は電話帳を使って枚数を数える練習に励んだことも。手を紙に慣れさせ、思い通りにさばくコツを身に付けました。「製本がきちんと仕上がるとうれしい。納品後にお客様が便利に使えるよう、どんな風に利用するかまで想像して作業します」と、印刷物のプロとしての顔をのぞかせます。

株式会社コダマ
坂田 悦子さん(64歳)

手を動かして物を作るのが趣味という坂田さん。ビーズを使った小物や、手作りマスクなど手芸も得意。お子さんたちはそれぞれ家庭を持ち、今はご主人と二人暮らし。カラオケや料理を一緒に楽しむ仲むつまじいご夫婦です。

冊子の背に専用の糊を塗布し、表紙で包む工程。手先の器用さに加え、「お客さまに良い品物を届けたい」というプロ意識がとても大切な仕事だといいます。

家庭にも職場にも役割がある幸せ

「今まで仕事に行くのがいやだと思ったことが一度もないんです」という坂田さん。プライベートでは3人のお子さんはすでに独立し、ご主人と二人暮らし。定年退職したご主人が、平日は毎日のように夕食を作って待っていてくれます。休日は夫婦仲良く台所に立つことも。「家も職場も楽しくて、私は最高に幸せ者ですね」と笑顔を向けてくれました。

印刷課の中では最年長。「忙しい時も朗らかで、いつも明るく太陽のような人」と慕われています。デザイン、製版、印刷、製本と、多くの人の手を通って完成する印刷物。チームワークがとても大切な職場です。

デジタル入力でサイズを指定し、断裁機で最後の仕上げ。サイズを間違えたり、ラインがずれたりすると、それまでの工程が台無しになるため、ベテランになった今も緊張感を持って行う作業だそうです。