“市のリサイクル率90%”を支える誇り高い企業
厳しい業務だからこそ、人の感謝が力に
富良野一帯から集められてきた大量の缶は、リングプルまで分別する徹底ぶり
富良野市はゴミを全22品目に分類し、リサイクル率90%を達成している数少ない町というのは知っているだろうか?
2004年、この取り組みに将来性を感じて起業したのがアートクリーンだ
元々、警察官として道内を転々としていた佐藤社長。子育ての環境を考えて故郷で起業した
佐藤社長はハードルの高いリサイクル率の達成目標にプレッシャーを感じつつ、町の未来のためを思うとやる気が湧いたと語る。
今では、鉄スクラップや古紙の取り扱い量が市内で1番多い企業に。
富良野市リサイクルセンターで、紙くずや木材、樹皮で作る固形燃料の製造を市から委託されるまでに成長した。
2016年夏には、台風で被災した南富良野町へも駆けつけ、水害で流れ着いた木材の撤去はもちろん、個人宅の浸水した家具も運ぶなど大活躍。
市民や企業からお礼の言葉をいただいたそう。
「私たちの仕事は、事務所や建築現場のゴミを片付け、快適な環境やクリーンな未来をつくること。お客様の“ありがとう”という言葉にやりがいを感じます」。
佐藤社長が掲げるその理念は、社員たちにもしっかりと浸透している。
2016年に購入したごみ収集車。佐藤社長は「台風被災地の南富良野町で大活躍した自慢の車」と胸を張る
2015年7月に転職してきた半澤誠臣(ともみ)さんの仕事は、廃品回収とスクラップの売買が中心。
朝8時に出勤してから18時頃まで、南富良野から上富良野町、占冠村の広いエリアで1日40件程度をトラックで回る。
毎日、1人で段ボールなどをトラックいっぱいに積み込み、事務所へ戻る作業の繰り返しだ。
「入社当初は体力的にすごくキツかったですね。重いものを何度も運ぶことも大変でしたし、中型トラックの運転に慣れていなかったため、余計に疲れました」。
そんな時、励みになったのがお客様からの温かい声。
年配の方の家から廃品を運んだ時に、とても感謝されてジュースまでいただいたのがすごくうれしく、モチベーションアップにつながった。
スタッフの笑顔が絶えないアットホームな会社
半澤さんが忙しそうにしていると、仲間たちが自分の仕事の合間を縫って手伝ってくれることもあり、2~3カ月で仕事のペースに慣れることができたそうだ。
「廃棄物の条例は細かくて難しいですが、フォローしてくれる仲間のためにも、早く仕事を覚えて会社を助けていきたいです」と、
謙虚な姿勢で仕事に取り組んでいた。
「お客様に褒められたことを社員みんなに伝える時は、自分も誇らしいです」と礒江さん
「事務の仕事でも取引先の方から、弊社の仕事ぶりを褒めていただくことがあるんです」と語るのは、2015年10月に入社した礒江亜矢さん。
電話や来客対応、請求書の発行などを担当している。
請求書を届けるため取引先に出向いた時、
「アートクリーンさんはいつも仕事が早いし丁寧」「いつもゴミ収集車が走っているのを見かけるよ。頑張ってるね」
と、言ってもらえることがあるそう。
「一所懸命働いている仲間が褒められると、自分もうれしくなって、自分も頑張ろうってやる気が出ます」。
家族参加も大歓迎の会社の行事は、社長を中心に企画。仕事も飲み会も全力で、毎回大盛り上がる
そんな礒江さんは一人娘を育てるシングルマザー。定時に帰れるので、娘との時間がしっかり確保できているそうだ。
しかも、保育所で娘が熱を出した時など、急遽仕事を抜けないといけない日は、社長や奥さんが仕事を代わってくれることも。
「保育所の行事にも参加できますし、家族優先にさせてくれて本当に助かっています」と、家事と仕事を両立できる職場環境に心から感謝している。
事務員として働く社長の奥さんは、礒江さんにとって仕事と母親業の心強い先輩だ
若くして子供を産んだ礒江さんにとって、アートクリーンは初めての職場。
就職して、今まで家族や友人だけだったコミュニティが広がった。
今では悩み事があって、気持ちが弱っている時、助けてくれる職場の仲間が心の支えになっている。
工場いっぱいに集められる大量のゴミ。一つ残らずキレイに片付いた時は、何とも言えない達成感に満たされる
富良野市リサイクルセンターの工場長・安藤孝泰さんは、工場の運営や管理のほか、工場周辺の草刈り、除雪、時には小学校の工場見学に対応することもあり、
仕事は山積みだ。
安藤さんは人の上に立つ役職でありながら、スタッフへの尊敬の念を忘れない
30代で今の役職に就任したこともあり、最初は働いている人の多くが自分より年上のベテランスタッフで、自分の知識と経験の量の少なさにプレッシャーを感じたこともあったそうだ。
だが、視点を変えてみると、経験豊富な先輩がいる恵まれた環境だと気付いた。
年配のパートさんも生き生きと働く職場。休憩所も賑やかだ
「働いているスタッフには、人それぞれに特技や専門的な知識がある。僕はそんなベテランさんから学び、自分の知識として吸収することにしました」
と、機械の点検や修理にも立ち合い、修理業者にも設備の維持に必要なことを積極的に質問しているそうだ。
安藤さんは今後、後輩の指導にも熱心に取り組みたいそう。
指令室で機械の運転をチェックした後、安藤さんも現場の作業を手伝いに向かう
働く上で大切なことの一つは、
“できることは何でも自分たちでやる”という意識を持ち、受け持った仕事に興味を持って取り組むことだと言う。
日々、積極的に勉強しながら働くことで、自分のできることが増え、会社の幅広い業務が理解できるからだ。
工場でゴミを仕分けるスタッフはベテランぞろい。異物に気付くスピードには工場長も感服
もう一つは、挨拶と礼儀。
「新人は分からないことだらけなのは当たり前。
お客さんの質問が分からなければ、『分かる者に確認してきます』と社会人らしい対応ができるように指導します。
先輩に教えてもらったら、聞いた内容をメモするなど、同じことは何度も質問しないよう心掛ける」など、
やる気を持ってほしいと安藤さんは語る。
仕事が終わると工場内を清掃。機械のメンテナンスも怠らない
アートクリーンの業務は、トラックの運転や大型機械の操作など、危険な作業もある。
廃品関係は条例が変わったり、分別が細かくなったりと、年々状況が変わる。
ゴミの分別でうっかりミスをして罰則が科せられるのも、大切な機械が壊れるのも、一人の不注意からだ。
そのため、最新のルールを覚えておくのはもちろん、市民が持ち込むゴミの分別についてもしっかり指導している。
資源リサイクルや廃棄物処理、工場の維持管理など、業務のほとんどをこなせる安藤さんは社長にとっても頼れる人材だ
「正しい分別方法をきちんと市民のみなさんに伝えることで、『教えてくれてありがとう』と言ってもらえるとうれしい。」と、安藤さんは笑みを浮かべた。
廃品回収業は、誰かが真剣に取り組まなければならない大切な仕事。
体力的にも厳しく、汚い仕事だからこそ、心から感謝され、やりがいを感じられる誇り高い職場だ。