食を通して人と人を結ぶ
ホスピタリティを大切に、「食」を通して富良野の魅力を発信。

国道38号線237号線が交わる、立地の良いレストラン「四季の恵」。目印はこの看板
地域と人、人と人のつながりを育む「食」の仕事。
農業が基幹産業の一つで、国内外から年間180万人以上の観光客が訪れる富良野では、地元で採れる食材のおいしさを紹介するメッセンジャーにもなる。
西川食品は昭和53年にお惣菜を中心とした食品製造販売業として創業し、長年に渡って地域の「食」を支えてきた企業。
今では仕出しや弁当の製造販売、給食受託やレストラン経営、東川町で学生会館の運営も行っている。
外食事業の中核店舗である、エーコープフォーレスト2階の「レストラン 四季の恵」を訪ねた。

西川食品がレストランを構える、エーコープフォーレスト。買い物帰りの主婦から仕事中のサラリーマンまで多くの人が立ち寄る
出迎えてくれたのは、外食部門を統括する天野正義部長。
調理や接客をしながら、同社が運営を担うゴルフ場やスキー場のレストランなどにも足を運び、指導や管理に当たっている。
元々は出身地の札幌から、新富良野プリンスホテルのオープンを機に富良野に移住し、20年ほど中国料理のシェフを務めてきた。

「うちはいろんなことにチャレンジできる会社。積極的に仕事の幅を広げてほしい」と天野部長。「私たちもそれ以上に勉強して、みんなで底上げしていきたい」
「ホテル勤務時代は厨房の中だけで仕事が完結していましたが、ここではお客様と接する場面がたくさんあります。どんな風に召し上がっているのか、喜んでくれているのかなど、直接見えるというのはすごく大きい。励みになります」
だから良い反応も、反省すべき点も、ホールから厨房へどんどんお客様の様子を伝えるようにしている、という。

「レストラン 四季の恵」は外食事業の中核となる店舗。明るい日差しが降り注ぐ140席の広々した店内でくつろげる
お客様をおもてなしするためには、働く人がやりがいを感じられる職場づくりが大切と、目標を持って取り組めるよう、スタッフの育成に力を注ぐ。
西川食品は、レストランや居酒屋、ホテルの従業員用食堂、仕出しでも高級な御膳やオードブル、各種宴会、おせちなどもあり、扱う料理は幅広い。
「ホール希望で入ってきて調理に興味を持ったり、店の異動を希望したりと、働く中ではいろいろな思いが出て来るものです。それに応えられるよう配慮していますし、実際それが出来るのも、複数の店や事業を展開している当社ならではの良さだと思います」

働く人の家族にも職場の雰囲気や味を知ってもらいたいと、従業員割引の制度も設けている
お客様に喜んでもらうために何をすればいいのかを考えられるよう、持ち場や社歴、立場に関係なく自分の意見やアイデアを出し合ったり、情報交換できる場も設けている。
たとえ他店に転職しても、そこで必要とされる人材になるように。
将来自分の店を持ちたい人も、独立後に困らないように。
そこまで考えてくれる会社は、そう無いと思う。

店の開店時、お客様への記念品として作った名入れのマグカップがずらり。久しぶりに訪れて懐かしがり、持ち帰るお客様もいるそう
本社に勤務する、栄養士の西川斐子(あやこ)さんにも話を伺った。
関東の病院や健康食品販売の会社に約8年勤めた後、創業者である父の体調を心配して帰郷し、2016年春に入社。
病院や福祉施設などさまざまな施設の給食受託部門で、配食サービスやデイサービスの献立を担当している。

「家業ではありますが、私自身入社して1年半の新米。後から入ってきた方にも馴染んでいただけるようサポートしたい」と、西川斐子さん。プライベートでは最近ゴルフにハマリ中
「関東だと同じ職場でも互いにライバル、という感じ。それも緊張感があっていいんですが、富良野はみんなが助け合って仕事している。最初はこの地域性に戸惑いましたけど、今はすごく楽しい」
担当施設の一つに、サービス付高齢者向け住宅「さらさ富良野」がある。
約20人分の献立を調理担当者とすり合わせるのが日課だ。
施設で利用者さんが食事する様子を直接見ることも。

「さらさ富良野」で翌日の献立の打ち合わせをする西川斐子さん(右)。利用者さんの要望も出来るだけ献立に反映している
「ここは、レストランみたいに揚げ立て、出来立ての料理を、来た順にお一人ずつ必要な量を目の前でよそって出すスタイル。食べている人の顔が直接見られると献立を考えるにも気合いが入るし、直接声を聞くことで献立にも反映できる。モチベーションに直結しますね。おいしいと言ってもらえれば純粋にうれしいですから」
「励みになる」と話していた、天野部長の言葉とも重なる。
以前は「エネルギーがこれくらいで…」と数字ベースで考えていた献立も、富良野で仕事を始めてからは「数字にこだわるより、まずは楽しんで食べてもらうことが一番大事」という考えに変わったそう。

フラノマルシェすぐ横にある高齢者向け住宅「さらさ富良野」。ここで献立を打ち合わせるのも、斐子さんの日課の一つ
また、「さらさ」では、食材の仕入れも自分で行う。
これまでは納品された食材をチェックするだけで、自分の目で食材を選ぶのは初めての経験。
「富良野はその日に採れた食材がスーパーで手に入りますし、友達の畑で育てた野菜を使う、なんてことも出来てしまう。これも産地ならではの良さですね」

約5年間に渡り学生会館の館長を務めた西川社長。「寮の仕事で留学生とのネットワークができました。facebook450人のお友達のうち、7割が海外の方」
お二人をはじめ、約160人が勤務する西川食品。
創業者・西川恵一さんの長男、啓輔さんが、2017年9月 社長に就任した。
「一人ひとりの良さを生かせるように、各事業を横断的に行き来して適材適所で働けるような体制づくりが必要だと思っています」
さらに、準備を進めている新規事業で仕事の選択肢もグンと広がる。
西川社長が「これから我が社の核になる」と位置づける、2018年夏に誕生する複合施設「フラノコンシェルジュ」だ。

2018年夏の開業に向け、着々と工事が進む「フラノコンシェルジュ」。富良野の中心市街地の活性化に大きな期待が寄せられている
「フラノコンシェルジュ」は、かつてデパートとして営業していた「旧三番舘」を富良野駅前再開発の一環でリニューアルし、誕生する施設。
3階の外国人旅行者対応のホテルと、1階の洋食レストランを西川食品が手掛ける。
初業態だけに大変さはあるが、すでに数名の外国人スタッフも入社し、体制づくりの真っ最中。
世界とつながる新たな職場に、社内外から期待が高まっている。

「フラノコンシェルジュ」の目の前は、毎年7月28日、29日に行われる「北海へそ祭り」のメイン会場でもある
入社した外国人スタッフは、同社が運営する東川町の学生会館「マ・メゾンPⅡ」の卒業生たち。
西川さんは社長就任前まで5年ほど館長を務め、多くの留学生と交流を深めてきた。
その時間が、西川食品の新たな仲間につながっている。
「新しい取り組みを応援したいと、『館長、僕もやります』『私も手伝っていいですか』と言ってくれる学生さんも多くて。心強いですよね」

新富良野プリンスホテルの社員食堂やフラノコンシェルジュなど新規事業のため、西川社長と天野部長は頻繁に打ち合わせを重ねる
レストランで目指しているのは地元に愛される店づくり。
「今後の事業展開のために総菜屋を閉めたんです。代わりに今まで味わってきていただいた総菜の一部を新しいレストランで復活させ、デリのメニューで提供していく予定です」
地元の食材を使い、地元のお客様に愛される店になってこそ、観光客にも魅力を感じてもらえると信じている。
また、3人とも口を揃えて、「富良野産の豊かな食材を味わってもらう機会を増やしたい」と話してしていたのが印象的だ。
人と人のつながりを大切にする同社で働くなら、どんな人が向いているんだろう。

どの事業も「食を通じて地域を盛り上げたい」という思いは一つ。また食べたいと思ってもらえる食事と雰囲気づくりを大事にしている
「おいしく食べていただく事に喜びを感じられる人、地域を大切にして誰にでも笑顔で挨拶出来る人。そんな人に仲間になってもらえれば」
と西川社長。
「おいしさ」を届けると同時に、人の命と健康に直結する仕事でもある。
だからどの職種でも、原点である調理場の仕事からスタート。
皿洗いや料理の盛り付けから覚えてもらい、それぞれが目指す職種に配属されるそう。
以前アルバイトした人が繁忙期に進んで手伝いに来たり、お世話をしてきた留学生が入社したり。
たくさんのサポーターがいるのも、「人と人」をつないで良い関係を築いてきたからこそ。
風通しの良いこの会社なら、どんな事でもチャンレンジできるはずだ。